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最後の晩餐にはまだ早い
南青山「MAMA」(2022年11月)
4月の合同誕生日会?以来の南青山高樹町「MAMA」を、約半年ぶりに訪れる事に。「フランス料理の哲学にもとづく創作洋食」の店だが、平日のみ会員メンバー限定特別ランチメニューが週替わりであり、この週は「牛すじ煮込みカキフライの玉子とじ」。会員とはランチ回数券購入またはLINE予約者だが、無理を云って一日だけメンバーにしてもらう(笑)、この料理が食べたかったからだ。
天気が良かったので、人が多い表参道駅ではなく乃木坂駅から青山霊園内を歩いて向かう、好きな散歩コースで秋色になった木々と墓石?を眺めながら歩くのは、気持ちのいい時間。根津美術館を過ぎ、高樹町交差点から店迄は来る毎に新しいマンションが建築中で、以前は静かな雰囲気だったが年々騒がしくなっている、でもその割に飲食店は増えていないので、「MAMA」の一人勝ち状態にも見える。
事前に連絡していた12時に入店、市村料理長とサービスの平垣内氏に挨拶し、カウンター代わりにしている大テーブルの隅、私の「いつもの席」に座った。
料理は牛すじ煮込みカキフライを食べたい旨は伝えていたが、あとは市村スペシャルで、内容は以下のとおり。
・MAMAの前菜
右から:焼き紫芋のポタージュ、帆立貝のフランとジュレ・焼き帆立、クスクスのタブレ(サラダ)・かっぱえびせん(笑)、根セロリと蟹の冷製
・平垣内ソムリエセレクションの白:ドメーヌ・シャンガルニエ ブルゴーニュ レ・ドレソル2018
・MAMA風ハムエッグ、2%の塩水に漬けた後、皮目をパリっと焼いた鶏モモ肉、ラタトゥイユ、ポルチーニ茸のソース
・「牛すじ煮込みカキフライの玉子とじ」定食、奥左右は白菜漬とひじき煮
・主菜のUP
・柿とブルーチーズ
・コーヒー風味の固いプリンとモンブランクリーム、砕いたビスケット?
・柿右衛門のカップに淹れたコーヒーはケニア種
・厳選大麦茶
まずは市村氏得意の野菜をメインにした前菜4種、中でも紫芋を一旦焼いてから潰しポタージュにしたものが特に気に入った。此処へ来ると毎回「これ自宅でも作ってみようかな」と思わせる料理やデザートが出るが、そう簡単に真似出来るものではない(笑)。他には私の好物であるクスクスが嬉しかった。
続いて魚系料理かな?と思ったが、出て来たのは何とハムエッグ(笑)、創作の世界では受け手の予想を超えて来るのが優れた表現者だが、これがそれだと思う。あまり詳しく書かない方がいいので、興味のある人は店へ行き「ハムエッグ食べたい」とお願いしてみて下さい。
そして期待していた牛すじ煮込みカキフライの玉子とじ、見かけは地味な下町定食メニューと云う印象、まずカキフライは王道でこれから美味しくなる牡蠣を良質の油で揚げ、これに牛筋肉の煮込みを加え、更にカツ玉みたいに卵でとじている、一見ガテン系の人達が好みそうな料理だが、実際には煮込みの段階で極力脂分を排し、見かけより繊細な味わいに仕上げている。
あとで市村料理長に「これ何処かに原型がある料理ですか?」と訊いてしまったが、『フランス料理に牛肉と牡蠣を合わせる料理があるが、それを変容して自分が一番美味しいと思う牡蠣の調理法である牡蠣フライに変え、牛筋煮込みを添えた』との事で、まさにフランス料理の哲学に基づきながら、白いご飯に合う料理だった(笑)。
デザートは市村氏が最近凝っていると云う昔風の「固いプリン」、やっぱりプリンは固くないといけない(笑)、作り方を教えてもらったので、今度我家でもトライしてみたい。
以前にも書いたが、白金高輪「ラ・クレリエール」の柴田料理長と市村氏とは、同じ名門調理師学校の同級生、卒業後はそれぞれ別の有名フレンチに就職したが、現在では求道的にフレンチを突き詰める柴田氏に対し、洋に拘らない自由な発想で楽しい料理を提供する市村氏と、対照的な道を歩んでいる。どちらも優秀な料理人な事は間違いないが、年齢を重ねた今の私は、市村氏の料理の方に好みが傾きつつある(笑)。
市村・平垣内両氏のセンスを感じられる店内、以前より緑が増えた。今度アナログプレーヤーを導入すると聞いたので、家から好きなレコードを持って来て、聴きながら食事させてもらおうかなと企んでいる(笑)。
平垣内氏の話では、以前から好評の弁当宅配やテイクアウト販売は順調みたいで、周りに飲食店が無いエリアなので、地域を代表する食スポットになりつつある。此の日も年配男性が静かに昼飯を食べている姿が印象的で、「ラ・クレリエール」での独り飯は周りから浮きそうだが、この店では不自然さが無い。
各駅からは離れているので店へのアクセスはあまり良くないが、それでも行く価値のある店だと思う。